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最近は、ITツールやクラウドの導入で「利益が上がる」、「社員が辞めなくなる」という目を疑うようなPRが増えていますが、皆さんはこれらのPRに対して、どのように感じられるでしょうか?

原理・原則にもとづいて、人事系のITツールやクラウドが役立つのか否か、検討していきたいと思います。

皆さんは、「カラオケバトル番組」をご覧になったことがありますか?
プロ歌手もアマチュア歌手も参加して、カラオケマシンの採点で誰が高得点をとれるか競争するテレビ番組です。

中学生の方でも100点を出したりされており、「すごい」と感じる反面、これらの番組でチャンピオンになられた方がプロのステージで活躍され続けているということはないという現実があります。

なぜでしょうか?

カラオケマシンは、「音程に忠実に歌うこと」、「声量を出して歌うこと」、「ビブラートやしゃくりなどの加点を獲得すること」に評価の基準を置いて、機械的に採点を行います。

しかしながら、実際に感動するかしないかを決めるのは人間一人ひとりです。
音程が微妙に外れたのかどうかなど、素人にはそもそも繊細に意識・認識できない方が大半ですし、そんなことより、感情があふれ出ていることが感じられ、心が震える感動体験があったと感じれることの方がプロパフォーマーとしての歌手に期待していることではないでしょうか?

歌手以外のプロパフォーマーの世界でも、日本は規格にはまっていることを重視する傾向にありますが、欧米などでは定型的なものではなく、規格外の独自のウリがあることの方が重要で、優れていると評価されていると思います。

パフォーマーの世界の事例から、人事の分野においても、ITやクラウドに依存して課題解決を図るには次の2点で無理があるのではないかと感じていただけるのではないかと思います。

①定型化した基準で人事評価・人事考課を行うと、本当に優れた人物を発掘できない。
 
形骸化した基準に評価者が依存してしまうことにもつながる。


②評価する側が一人ひとり違った価値観で評価をおこなってしまって不公平感が発生する。
 
いくらITやクラウドを導入したところで、入力事項(評価事項)に誤り(エラー)があれば正常に機能しない。

もし、御社に人事系のITやクラウドの導入提案があった場合に、「〇〇の場合はどうすべきか?」、「〇〇という懸念にはどう対処するのか?」など粘り強く、深く質問を繰り返していただくと、恐らく明確で明快な回答が得れないと不満を感じるられることになるのではないでしょうか?

なぜなら、ITやクラウド自体で人事の課題が解決できるわけがないからです。

人事の現場の本質的な課題を知らないIT・クラウドの営業担当者が多いということだけでなく、ITやクラウドといったツールは記録の蓄積しか機能がないのに魔法のツールのように過度な期待をしてしまうということも問題です。
単なる記帳・記録ツールにいくら払うことが経営の観点から適正なのか、しっかりと判断しないといけません。

原理・原則にしがたい、次のような事項を「評価する側」も、「評価される側」も共有できていなければ、せっかくつくった評価制度も現場では機能しません。

☆組織の指揮命令系統は正しく理解できているか?

☆基本あっての応用ということが理解できているか?

☆等級制度にはどんな意味を込めているのか?

☆評価制度にはどんな役割を期待しているのか?

☆どうすれば人材育成につながるのか?

☆現場で起こっている〇〇という事象・事実はどう評価すべきか?

☆評価される側だけでなく、評価する側に問題があるケースも想定できているか?

☆絶対的な評価と相対的な評価の整合性をどう保つか?

☆人事評価の軌道修正をどのように行うか?


一人ひとり人間として豊かな個性がある社員に対し、どう接することでそれぞれの能力を引き出し、高めていけるか、粘り強く原理・原則にしたがってアプローチしていく必要があります。
社員個人に対して、人材育成の最終目標だけでなく、小刻みな成長ステップも明確にしていくことも当然必要になります。

人事評価制度は、人材育成のツールです。
社員を育てる仕組みづくりは、組織強化のために非常に大切です。
しかしながら、イレギュラー(非定型)にどう対応して「運用」していくかはもっと大切です。

問題・課題から目をそらす(ITやクラウドに依存する)のではなく、社員に向き合うことが本当に求められているのではないでしょうか?

人事の仕組みをどうつくっていこうか?
運用はどうしていこうか?
癖の強い社員にどう接しようか?
〇〇という場合には、どう対応していこうか?

人事担当者は、「経営者」と「現場」に挟まれて大変な立ち位置におられるのではないでしょうか?
不安や課題が発生した場合は、専門家も活用し、解決を図りましょう。

大阪ビジネスサポートセンター
代表 南  一啓
http://www.o-biz.jp/