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日本が抱える少子化による労働人口の減少問題がいよいよ実感する域にまで到達してきました。
全国平均では、定職を探されている方1名に対して1社以上から採用オファーがあるという、いわゆる求職者にとっては会社を選べる時代です。

では、そんな経営環境の中で、どうすれば「いい人材」が採用できるのでしょうか?

この課題に取り組んでいくには、まず「なぜ労働者を雇用するのか?」という、一見当たり前にも思える基本・根本から考え直していく必要があります。

次のような4つの理由をよく耳にします。

①現場(製造ライン)に人がいないと仕事がまわらないから

②現場からは人数を増やしてくれと要望があがっているから

③新たな人を雇い入れると既存の社員の刺激(競争相手)になり職場が活発になるから

④外注や派遣よりコストが安いから


経営支援の現場では、他にもいろいろな理由を耳にしますが、「必要だから必要」というような理由付けが多く、なかなか核心にせまる説明が得れません。

「雇用」という形態だけでなく、「外注(請負)」、「派遣」、「委任」など人的経営資源をコントロールする方法はたくさんあります。

その中から雇用を選択する根源的な理由は何なんでしょうか?


起業した人は周りの方から「いよいよ一国一城の主なったんだな」と言われることがよくあると思うのですが、まさしく「より強いコミュニティをつくる」、そのためにいろいろな選択肢の中から「雇用」を選択されることになるのではないでしょうか?

より強いコミュニティをつくり、一人では達成できない成果を実現する。
それが最終的な目標ではないでしょうか?

そうだとしたら、より強いコミュニティをつくるには、「良い仲間が必要」ではないでしょうか?
「国(会社)があるから人がいる」のではなく、「人がいるから国(コミュニティ・会社)になる」ということが言えるからです。

ですので、「採用活動」とは、「コミュニティに仲間を迎えるための努力」に他なりません。

このことを明確に意識できているか、実践できているかは非常に大切だと、私は思います。

採用を強化したいという会社にお伺いすると、次のような4つの声をよく耳にします。

・なぜ会社が労働者にへりくだらなければならないのか、膝を折らなければならないのか?

・うちは製造業だから(他にも建設業だから、介護事業だから、零細企業だから)見向きもしてもらえない。

・すぐに辞めるかもしれない人のために、なぜ時間とお金をかけないといけないのか?

・うちの仕事は最低賃金しは払えないし、最低賃金で募集してもどうせうちの会社に来てくれる人なんていない。


これまでの雇用の経験から労働者に裏切られたと感じることがあり、そのように考えが至ってしまっているのかもしれません。

しかしながら、仲間にしようと思う相手に疑心暗鬼でアプローチしては、いつまでたっても思うような成果を上げることができないのではないでしょうか?

「どうすれば目的を達成できるのか?」、「現場でどう機能し、活躍してもらおうか?」このような視点が大切ではないでしょうか?

売上を拡大するためには、マーケティング技法を活用し、「認知・注目」→「興味」→「比較・検討」→「行動」→「満足・シェア」というステップを踏んで、順々に販促活動を進めているのではないでしょうか?

同じマーケティング技法を「採用」の場面で意識して活用していくことで、成果につながるのではないかとはお考えになれないでしょうか?
アナログ手法だけでなく、デジタル手法(WEB)も組み合わせて複合的にすすめていくことで、より望ましい採用がおこなえるとお考えになれないでしょうか?

小刻みなステップ(小目標)を設定し、求職者がそこに至ってくれるには、どのような努力(行動)ができるのか、有効なのか?
そのことを意識して行動していくことが成果への近道であると私は考えます。

これからともに道を進んでいく仲間に接するのに上も下もありません。役割の違いがあるだけです。(もちろん組織の指揮命令系統を明確にすることは大切ですが。)
基本的な「姿勢」を正すことが経営者と労働者ともに必要であり、「結果」はその後についてきます。
仲間を迎えるにあたって、姿勢という面で「あいさつ」、「清掃」などやろうと思えばできるできることはたくさんあるはずです。
姿勢が整っている組織は、気持ちがよく居心地が良いものですし、そういった状態が嫌いないい加減な方は去ってくれるという効果も発揮してくれます。

特定の業種が人手不足に悩んでいるということがマスコミを通じておもしろおかしく報道されていますが、本質・実態はそうではありません。
業績についても特定の業種、特定の地域が悪いという報道がなされる一方で、不況の中で業績を伸ばされているキラリと光る企業も存在しています。
採用についても同じように、業種や地域に関係なく、他社が取り組めていないことに取組み、キラリと光る企業がたくさん存在します。
他責的な思考ではなく、「どうあるべきか?」を考え抜き、実践していくことが必要です。

すぐ辞めるかもしれないから教える方も真剣になれないということがあるかもしれませんが、そう思われるのであれば、「こんなことはできて当たり前」という変な常識をとっぱらい、基礎の基礎から丁寧に接していくことが必要かもしれません。
少しづつですが、できる仕事の範囲が広がり、小さな成功体験、仕事のやりがい、会社への帰属意識の醸成へとつながると思います。
失敗したときにすぐ「怒る」経営者・指導者がいらっしゃいますが、経営的な観点から考えたとき、自分の感情をスッキリさせることが目的ではないことは明らかだと思います。
そうであれば、一拍おくことで自らの感情を沈め、「どうすれば再発防止につながるか、相手の成長につながるか」ということを見すえた接し方が必要なことは明らかです。
指導したことが理解できているかどうか「わかったか?」という質問を行うことに何の意味もなさないことをもお分かりいただけると思います。
「伝える」と「伝わる」は全く別のことですので、伝わったかどうか確認するには、相手に理解できた内容をアウトプットしてもらうほかないと思います。
時間に追われ、労働者と向き合わず、都合の悪いときはITやAIなどへ依存しようとする方もいるのではないでしょうか?
そういった気持ちは、逆に今の若い人たちに見透かされてしまっていることも多々あると思います。
手塩にかけて接する、育てるという意識が必要で、そのためには人事の仕組みもしっかりとさせておかなければならないということは明確です。
仲間の成長は、会社の成長にもつながることは言うまでもありません。

最低賃金で人材募集することを前提に進められるケースにおいても、「最低賃金で採用すること」が至上命題になっており、「どういうビジネスモデルに再編するか」という経営判断が抜け落ちてしまっていることが多々あります。
今の取引先がそうだから仕方がないというのは、経営判断を放棄していることに他なりません。
いまの条件を取引先が継続してくれるとは限らないのです。
相手方が取引条件を変えてきたときにどう対応できるか、他の取引先へシフトという経営判断ができるように仲間とともに想定しておかなければなりません。
そのためには、仲間が「どんな強みをもっているのか」「どの技術・知識を強化していかなければならないのか」を把握しておくことは必須です。
素晴らしい仲間となら、より収益性の高いビジネスモデルへ転換することができるかもしれません。
「どうあるべきか」今一度考えて行動に移していくことが必要ではないでしょうか?

最近は、日本人の採用だけでなく、海外人材の採用にも注力されている企業が増えています。
事業のグローバル化に備えて、「留学生」、「外国人技能実習生」、「外国人技術者」なども検討に入れられることも一考です。
外国人とのコミュニケーションを通じて、「日本の常識が海外の非常識」であることが意識できたり、「コミュニケーションの基本」を外国人教育を通じて深く理解できるかもしれません。

「雇用はコストという考えではなく、会社というコミュニティを強くし、レバレッジをきかせるための経営資源」と改めてとらえて、「どう機能させるか」「どうあるべきか」「どう行動するか」向き合っていきましょう。

大阪ビジネスサポートセンター
代表 南  一啓
http://www.o-biz.jp/