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日本国内の職場では、若年労働者が少なく中高年齢労働者数が増えており、技術承継・技能承継に課題を抱えている企業が増えているのではないでしょうか?

業種を問わず、様々な現場を訪問させていただき、次のような声も耳にします。


「今は40歳~50歳代のメンバーが中心で正常に業務が運営できているが将来を考えると技術・知識・ノウハウを若年者に伝えれないことが目に見えている。」

「すでに高齢技術者が70歳を超えているが、誰も引き継げていない状況。」

「リーマンショックなど景気の変動もあり、人員整理などを行ったこともあるので若年労働者が減っている」「最近の若年者は教えようとしてもすぐに退職するのでうまくいかない」などの声も聞きますが、真因は次の3つの理由に集約できるのではないかと私は考えます。

【理由1】
会社も技術保有者も保有している技術を明確に理解し、見える化できないから。


意外に思われるかもしれませんが、会社自体もそうですし、技術保有者も体感的に経験として身についているだけの状態(暗黙知の状態)であり、「体系化して説明することができない(形式知の状態にできない)」という現状が多く見受けられます。

これは、理解の深度を次の5つのレベルに分けて捉えてこられなかったため起こっているのだと思います。

レベル1「他人に教えてもらってできる」

レベル2「ほとんど自分でできる」

レベル3「自分で完全にできる」

レベル4「他人に個別に説明・指導することができる」

レベル5「集団に説明・指導することができる(共有できる)」


技術や知識を身につけてくるとレベル2やレベル3の状態で職人・技術者として一人前と誤解して、その次のレベルに進むのをやめてしまう人がおり、昔ながらの徒弟制度のように背中を見て技術・ノウハウを盗めという事態が発生しており、企業も時間に追われるあまり、それに対して本腰をあげて何ら課題対応してこなかったという背景があると思います。

なかには、経営の観点から重要とされる技術を保有している技術者の機嫌を損ねるのを恐れて、その問題を見て見ぬふりをしてきたという企業もあると思います。

この課題に対応するには作業や技術を細分化し、体系化する必要があります。

次の3つのステップです。

「理解」

「分解」

「再構築」


いわゆる「作業手順書」をつくるということが好ましいと言えます。

作業手順書をつくるのに手間暇がかかるため、「時間がない」「うちの業種には適さない」「作業内容が頻繁に変更する」と様々なできない理由がつけられて難航することが想定されますが、「やるのかやらないのか」「やらないとどうなるのか」、経営判断が必要なことであると思います。

「作業手順書」ができると、無駄に考え込んだり、判断・手順に迷ったりするロスタイムがなくなり、作成に少し時間がかかるものの、完成してからはリードタイムが短縮されたという声をよく聞きます。
理解も深まり、勝手な解釈・判断での手順飛ばしもなくなり、品質・サービスの向上につながるという声もよく聞きます。

プロジェクトマネジメントで活用されるWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)をもちいると工数管理もでき、詳細に見える化できるかもしれませんが、初めて作業手順書を作られる場合はもう少し肩の力を抜いて、ざっくりと作っていきはじめ、徐々に内容を詰めていく方が良いと思います。

同じ作業をしてる2人が作業手順書を作っていくと、目に見えて工程の違いがわかるなどの効果があります。

作業手順書は人材育成のツールですので、「誰がどのようにつくるのか」、ここを意識して進めていくことが必要です。


【理由2】
なぜ技能承継が必要で、どう行うのか「企業の仕組み・仕事」として定義されていないから。


技術承継・技能承継など教育に関することは、時間も手間もかかります。
しかしながら、それが仕事として認識されていないと、現場ではただでさえ忙しい現状なのに「余計なことをなぜしなければならないのか」という不満が溜まることになります。

教育に時間を使うことを明確にし、誰にどんな教育を行うのか、等級表などに定義していることを実行していく仕組み、それを実行してもらう役割・担当者は誰なのかを明確にしていくことが必要です。

成果主義や歩合給的な要素が強い企業・職種でしたら、教育担当者にどう評価をするのかまで検討しておかないと、教育担当者の立場からすると社内ライバルを育成して、なおかつ、自分の成果をあげる時間がなくなるという不満要因が増加することになります。

本来は管理職になればなるほど自分自身の成果だけでなく、自分が管理するチーム全体の成果向上にどれだけ貢献したかが評価されるべきなのですが、プレイングマネージャーという色合いが濃い企業が多く、スーパー営業マンなどが管理職より評価されているという事態がよく見受けられます。

企業とした、タイムマネジメントの「緊急性」と「重要性」のマトリクスで「緊急性が低く、重要性が高い分野」の仕事を放置してしまうと持続的な成長ができません。

企業はゴーイングコンサーンが必要と言われるとおり、短期的な成果より、長期的な成果のほうが大切なのは明らかですので、組織の設計、実行する仕組みが大切です。


【理由3】
自分の技術・技能などを教えると企業にとって自分が存在する必要が薄まるから。


特に高年齢労働者が抱く不安です。
身体的には若年者より弱くなっていることを実感されていますので、技術・技能といった秘伝のタレまで、自分唯一のものでなくなってしまったら、企業から自分への期待がなくなり、お荷物扱いされるのではないか、リストラ候補になってしまうのではないかと労働者目線では感じてしまうのではないでしょうか?

また、自分の技術・技能をオープンにすることによって、他の労働者がより良い技術・技能に昇華させてしまうと、自分自身がチヤホヤされなくなり、無能扱いされるのではないかという不安もあると思います。

これらの不安を取り除く仕組みが必要であり、実際に評価もされるという実感・現実味も大切であると思います。

表彰を行う、手当をつける、身分を保障するなどいろいろな方法があると思いますが、金銭的なものばかりに目を向けず、承認欲求を満たす方法の方が効果が継続するのではないかと思います。
また、それが正しい仕事の進め方ということも認識いただけるようにすることも大切だと思います。


以上、3つの理由と課題解決の取り組み方法をふまえて、具体的にどう動くか。

どの企業もこの問題に悩んていると思いますが、「できない」「やらない」と言ってられる段階ではない時期にさしかかっているのではないでしょうか?

事業承継も技能承継もITツールやAIで対応できるものではありません。

「渡す人間」、「受ける人間」の双方が腑落ちしてこそ目的を達成できると思います。

小さなステップでもまずは踏み出すことが必要ではないでしょうか?


大阪ビジネスサポートセンター
代表 南  一啓
http://www.o-biz.jp/